自邸

自邸 愛知県一宮市萩原町富田方
自邸

ここ、愛知県一宮市萩原町は木曽川下流の沖積平野にあり、敷地周辺は今でこそ住宅が建ち並んでいるが、つい最近まで水田地帯であった。
夏は気温だけでなく湿度も高く、冬は日本海から伊吹山を越えて空っ風が強く吹く。
名物には切り干し大根があり、この空っ風と冷え込みを利用した天然の加工品を生み出していた。
そんな、夏冬ともに温暖というには少しハードな地域である。

平面や断面の計画においてコンパクトな空間づくりをする。

機能を満たす限り小さくつくることは重要だ。
動線を短くするなど使いやすさにつながるし、使用する材料も減る。
また、空調する空間ボリュームも小さくなり必然的に省エネになる。
そして何より建物をコンパクトにつくることは建物の周りに庭を配する余裕を生み出す。
住宅そのものの計画も重要だが、実は住宅を取り巻く庭などの外部環境づくりが住宅の質を左右するのだ。

外壁仕上げは大工中村さんの提案で焼き杉板張りに。

敷地近くの田んぼを借りて自分たちで焼いた。
長さ4メートル厚さ21ミリの材を三角にワラで縛り、最下部に火をくべると焼き厚のバラツキもムラもなく綺麗に焼ける。(ブログに詳細アップ予定)
うろこ状に黒く光る外壁は美しい。
炭化しているので延焼しにくく、メンテナンスもフリーとされる。

杉板の乾燥

厚み7分(21mm)、巾7寸(210mm)、長さ4000mm、130枚。杉の板は、軽いイメージでしたが、含水量が多いものはずっしりした感じです。

杉板焼き

新聞紙3枚で、4m材がほぼムラ無く焼ける。

焼き杉の表面

炭素層が形成され耐久性が増します。デザイン的にも落ち着いた感じになる。

南と北の二つの庭で居室をはさむ

建物をコンパクトにすることで生み出した南北二つの庭。
建具を開閉することで居室に適度な自然の気が流れ込んでくる。
居室を仕切る障子を開けると、南の庭、居室、北の庭がつながり、風が通り、微妙な明るさのコントラストが奥行きを感じさせる。
庭に挟まれた居室は自然の通り道のようでもある。

朝を明るく迎えたい。

キッチン、ダイニングを東側に配置し窓を設ける。
太陽の光を受けながらの朝食づくりや食事は1日を気持ちよくスタートさせる。特に冬の午前中は差し込む陽ざしにあふれ温かい。

家が清々しいこと。

この家に住んで、一番伝えるたいこと。それは常に感じる清々しさだ。
夏でさえ暑さの中にどこか清々しさがあるのだ。
常に空気が抜けるように適所に開口部を設けているが、それとは別の気持ちよさがある。
土壁には水分の吸放湿性があり、化粧品の保湿性のために使われたり、湿度管理の重要な美術館の建材にも土由来の建材が使われている。
また、土の微細な粒のもたらす吸着性により空気を清浄にするようで、清々しさは土壁がもたらしているのではと感じている。

明り障子、紙一枚の働き

和紙の明かり障子がもたらす明るさは、季節ごと、時々刻々に移ろう。
その明るさは自ずと家外の様子を何気なく伝えるものであり大きな魅力であるが、実は大きな断熱性能を有する装置でもある。
あの薄い紙一枚が窓からの熱をブロックしてくれるのである。

風呂は回復の場であり
ゆったりできるようにしたい。


お風呂はユニットではなく、南木曾でつくられる檜の浴槽、壁は杉板と土壁の中塗り仕舞、天井は杉板、床はモザイクタイル貼りとしている。
カビの発生を抑えるために壁と天井内の通気や開口部に工夫をしている。
湯を使うと土壁、杉、檜から心身に深く届く香りが立ち、灯りを落とせばさらに嗅覚が導く回復の場となる。

土壁は、土そのものの性質が生きている。

土壁は土にワラをすき込んで発酵させたものを用いる。
数百年を経た土壁でも水を加えてほぐしワラをすき込み直して再利用することができる。
ここでも解体した自宅の土壁を一部再利用している。土壁に断熱性はないが蓄熱性があり外断熱とすることで安定した温熱環境としやすい。
また、土そのものが持つ調湿性能と吸着性能が優れているため、家の中の空気がいつも清々しい。
浴室の壁仕上げの一部を土壁仕上げとしているが、湯船につかっていると水分を吸った土壁から甘い香りが微かに漂う。
左官仕上げの仕事の時に満ちていたワラすさの甘い香りだ。
今でも土が水分を吸収するとワラから香りが立つようだ。

土壁の表情

床の間の壁は荒壁のままだ。施工が進む中、床の間につけた荒壁にさび(時間とともに表面にあらわれる模様)がつき、良い風景になってきたので蒼築舎松木さんと相談してそのままにすることにした。
松木さんは磨き仕上げを得意とされることもあり落とし掛けの下端を磨いてもらった。
微細になめした皮のような仕上がりで、まさに仕上げの最後はビロード状の布を用いる。
食卓横には、登り梁を伐った山で採取した赤土を用いた欠き落とし仕上げの壁とした。
全体的に穏やかな仕上げのなかに自然の強さを感じさせる土仕事を盛り込んでもらった。

外窓に木製建具を使いたい。杉と土の家に木製建具はよく馴染む。

生活の中心となる居間の南向きの窓にゆらゆらガラスの入った木製古建具を使う。
限られた予算や気密性を考慮し、冬の強い北西風の影響が少ない居間の南面のみを木製建具とし、他の外部建具は複層ガラスのアルミサッシュを用いる。
すべてを同じ仕様で考える必要はなく、予算内で効果的に適材適所となるように心がけている。

山で木を選んで伐り、余すことなく使う。

居間の吹き抜けには、あて(曲がり)のある実生(その場所で種から育った)70年生の杉を登り梁として使った。
これは私の建築家としての活動をサポートしてくれている仲間の木こり杉野賢治さんに、愛知県三河、矢作川水系の東萩平の山で伐ってもらった材だ。
葉枯しで乾燥させた樹高20メートルの生命力あふれる力強い杉の一番玉(地面に一番近い幹の部分)を登り梁として用いた。
自分で選び、伐採には家族で立ち会ったことで、この登り梁を目にすると山の風景が浮かび豊かな気持ちになる。
2番玉以降は地棟梁、地束、手すりなど家のここかしこにできるだけ丸太のまま用い、先端まで1本すべてを使い切るようにした。
今では特別になった山で木を選び、余すところなく使い切るということを、木こりである仲間のサポートを受けながら今後の住まいづくりで実践していきたい。

選木

大工の中村さんと木こりの賢ちゃんと山に入り、自宅に使う登り梁を選木。木の伐り旬にあわせて自然の理にのり、伐ってもらいます。3時間ほどかけて歩き回り5本を選ぶ。

伐採

大工の中村さん立会いのもと、家族が集まって見守る中、木こりの賢ちゃんに伐ってもらう。

加工

大工の中村さんの工場で作業。

屋根の上を活用したい。

屋根の上の空間は活用されることが少ない。
地面からほんの6、7メートル上の空間は空が近く、太陽が注ぎ、風が渡る、大変に気持ちのよい空間だ。
自宅では、8畳ほどの物見台を設け、日々空をゆく鳥や雲やそよぐ風、夕暮れ、月星の運行を寝転がりながらじっくり堪能できる。
この空に放り出されたような開放的な小空間で、多人数での宴会も好いが、気の知れた数人でじっくり話し込むのも至福である。(ブログの「風のつどい」にアップ予定)

足裏の敏感さを感じる杉の床仕上げ

床材は人が直に触れるという点で最も大切である。
ここでは、杉の赤身で厚さ30㎜のフローリングを用いている。
当初は油分の多い赤身ゆえ、若干の冷たさや堅さを感じたが、3年を経る頃から柔らかさや温もりを感じるようになった。
足の裏はとても鋭敏で、材のわずかな変化を感じ取ってのことと思われる。
間もなく住み始めて5年となるが、今でも日々常々、運ぶ足の裏から感じる杉の感触が幸せな気持ちにさせてくれる。
私の家はこのホームページのネットワークで紹介する職人さんたちに支えられて建てることができた。
ここではアップしきれない職人さんたちの経験による知恵と技が活かされている。
温もりと清々しさを住まいに求める人に、その要望を設計者として具体的な形にまとめ、職人さんたちの力を借りながら提供していきたいと思う。

計画概要計画概要
仕上げ・仕様仕上げ・仕様
機能・設備機能・設備
設計設計
施工施工
その他その他