こっこ保育園は、三重県四日市市の市街地西端のゆるやかな丘陵が始まるあたりにあります。
園長は「生活の延長線上に遊びがある」との考えをもっており、里山のような立地はその条件を満たすものです。
大きな特徴は、園庭を取り囲むように設けた幅広の木テラスです。
こどもの育つ環境には、大人も含めた人の交流が大切であることを建築的に形にしたものです。
園舎の背骨部分には、耐震性能を確実にするための鉄筋コンクリートの構築物を連続的に通しています。
一般的木造には筋交いや壁などが耐震上必要ですが、この構法によって園舎の大部分を開放的な木造とすることができています。
大きくとった開口部からは、光と風を取り込むとともに、こども達が遊ぶ里山の風景をみることができます。
全景
四日市市内で、「くう・ねる・あそぶ」を子どもの成長の三大栄養素と掲げる、社会福祉法人ひよこ会による第2保育園の計画である。 自然との関わりが生み出すすばらしい遊びや食を求め、市街地がなだらかな丘陵に切り替わる街と自然の接点を計画地とした。 建物は、この里山的な環境を取り込むことと、子どもや親、保育士や園を訪れる人が一体感を持って交流できる木のぬくもりがあることが求められた。 木造とRC造による混構造の平屋建てとし開放感を追求するとともに、園庭を軽く囲い込んで園の一体感を出すとともに、里山とも連続感のある計画とした。
外観
外観
自然と建物の接点として、1間半幅の広い木テラスを園庭を囲むように園舎全体に設けた。 自然の風や光を受けながらゆっくりと過ごすことの出来る第2の保育室として活用されている。 テラスがすべての保育室をつなぐとともに、軽い囲み型をしているため、自然とお互いの姿が垣間見え活気をもたらしている。 また、テラスは居心地が良く長い時間過ごす場となり、園庭を行き交う人との交流が活発になされている。
保育園は子ども達が長時間生活する場であり、木造のやさしいスケール感や温もり感が大切である。 一方、陽当たり通風といった自然を建物に取り込むため可能な限り耐震壁を少なくする必要があった。 同一断面をもつリニアな形状の建物のセンターラインに、RCラーメンを背骨状に配し、 木造の水平力を負担させることで、木造部分には耐震要素のない開放的な建物を可能にした。
壁を減らす構造的な工夫により、自然通風、自然採光を十分に取り込めるようにしている。 夏期の大きな熱負荷となる屋根面には、軒先から天井裏に外気を導入し、越屋根や棟換気部分から熱気を排出できるようにしている。 また、ハイサイドライトでは、水平剛性を高めるために設けたRC造スラブに直射光を一度反射してから室内に導く断面計画としており、 間接光の安定した明るさを提供している。 また、子ども達は背が低く床面からの輻射や対流の恩恵を受けやすいことから、床暖房を設置し、快適な環境と省エネを両立している。
玄関
計画地は、風致地区であり、里山的な風景と畑や田んぼのある地域景観が特色である。 建物の軒の高さをそろえることで伸びやかな水平線をデザインの特徴としつつ、高さを抑えることで里山の風景を屋根越しに見えるようにしている。 屋根材はガルバリウム素地とし、外装は木構造あらわしに杉羽目板張りとすることで材料の素材感を出し、自然豊かな景観に調和するものとした。
特徴的な構造ではあるが、杉集成材の大垂木による同一構造の連続体とするとともに、在来工法による一般的な技術でできるようにしている。 子ども達が長時間過ごす場として、木を活かした環境が最も適しており、保育園などの比較的大きな施設にも積極的に木造を取り入れることが望ましく、その可能性を追求した。
園庭を囲むように深い庇とウッドテッキがのびる。
幼児テラス
子育ては、みんなでするもの。
ここに集う人々の交流が多様で柔軟な子育て環境を生み出します。
大きな縁側が園庭をぐるっと囲みます。テラスは遊び場・食の場・語りの場になります。
子育て支援の家は、なつかしく居心地が良い土壁の伝統工法。
子育ての拠点であるとともに地域の縁側をめざします。
雑木林に畑に、田んぼ自然と人の営みがここにはある子どものひとみがキラキラ光ります。
居心雑木林と田んぼと畑が織りな3里山に保育園をつくりました。時間をかけて里山との関わりを熟成します。
こっこ保育園は、39年前に四日市で初めて開設された乳児保育所を前身とする「ひよこ保育園」の姉妹園として2007年開園しました。
園の運営は創設時からの伝統である《共同保育所》の理念を生かしながら、保護者と職員が一体となって行っています。
ゆっくり、じっくり、ていねいをモットーに、子どもたち一人人が尊重される保育、
人とのかかわりや仲間といることが楽しいと思えるようなごく普通の生活を大切にしたいと思います。
山の風景が残る豊かな自然の中で、毎日出かける散歩は、キイチゴやむかごなど自然の恵みがいっぱいで「こっこ保育園」ならではの風物詩です。
ホール
乳児と幼児の交流の場に!と考え、園舎の裏ん中に設置しました。 子ども同士だけでなく、玄関の近くにあることで、お迎えに来てくれたお父さん・お母さんにも大きい子たちの姿を見てもらったり交流してもらったりできるといいなと思っています。 大勢の催しものの時は玄関ホールが客席なります。
ホール
イージーメンテナンスの間接照明がホールの天井をやわらかく照らす。
特定保育室
緊急時や、リフレッシュなど一時保育や、週2~3回の定期的に来る特定保育の子供たちが過す保育室です。屋根のハイサイドライトは室内に採光と通風をもたらす。
0才児室
0才児室
0・1歳児は、睡眠の保障を第一に考え、幼児クラスと離し、駐車場に近い場所に置きました。入り口ゲート脇なので、たくさんの人とお話できます。
保育園づくりをそこから始めました。
「遊んで」「食べて」「寝る」という
極あたり前の行為が日常の生活の中で
思う存分直に体験できる場所
ここには無限のあそびと育ちがあります。
各クラスに、たっぷりとした陽射しが入り、明るく暖かな場所に配置しておリます。 また、園庭を向いていることで、室内からも園庭からみ波を向くと、前に山が開け、青空も見えるよ。
1才児室
骨格が内部空間にも現れる。ハイサイドライトから陽さしがもれてくる。
少し落ち着きのある保育室サンルーム的な食事室、半屋外のテラススペース3つのスペースが連続しスムーズな保育を作り出します。
園舎中央の棟部分に設けた天窓で、部屋の奥も明るく、けた風が抜けます。
鉄筋コンクリートの骨組みが屋根を支え、開放的木造園舎をして、風通しと明るさを十二分に取り入れています。
木テラスは軒の出たっぷり居心地が良く長時間過ごすから自然と交流が深まります。
2才児室
木軸構造の軽柔さと杉板に囲まれた温もりのある保育室。
乳児ほふく室
3・4・5才児室
おいしい!と笑う顔は命に満ちあふれている。食はすべての根っこです。
テラス、サンルーム、保育室へと居場所がつながり、風がゆるかにながれます。
料理の楽しさが、香りや音となってあふれ出す。園のへそは、調理室,食事室です。
台所
“食は人をつくり人を結ぶ こっこの台所はみんなの真ん中”
ということで園舎の真ん中にもってきました。
食堂には“いろり”もあり、暖をとったり、おもちなどを焼いたり、いこいの場にもなります。
子育て支援棟
1人でも多くのお母さんたちの悩みにも応えていきたいという思いから いつでも来園してもらえるよう別棟にしました。 子育ての相談にのったり、お母さん同士が交流し、より子育てを楽しんでもらえる場になって欲しいと考えています。 また地域の人たちにも使ってもらえる場になって欲しいと考えています。 土間には“おくど”も作ります。 子育て支援や地域の人にも使ってもらえるといいなと思っています。
子育て支援棟は(金物を使わない伝統工法)別棟として設けています。 いつでも気軽に使ってもらうことが重要であろうとの考えからです。
実は、まだ未完成でじっくり時間をかけて作ることを重視しています。 最低限必要な部分はもちろん完成していますが、土間の床を三和土(たたき)にしたり、 おくどさんを設けたりと作業が残してありますし、将来にわたって使いながら手を加えることになるでしょう。
このような作業も、こっこ保育園に共鳴して頂ける地域の人々の力をお借りすることで生きた形でつながり、 保育園という枠を越えた存在価値づくりの一端となればと願っています。
夜景
夜景
夜景