木こり・杉野賢治

木こり・杉野賢治
木こり・杉野賢治

42歳で会社員を辞めて、山に入り炭焼き職人をしている杉野さん。
炭作りに必要な木を手に入れるためにはじめた伐採と製材の仕事に、面白くてのめりこんでいきます。
「木こり」として、「炭焼き職人」として、山で生き、
実際に木に触れる毎日の中で得た、住まい造りに大切なことを教えていただきました。

 

どうしても自分の手で炭を焼きたかった

元々SE(システムエンジニア)だったんです。横浜に十数年住んでいました。信号機メーカーで、列車の運行管理システムのSEを40歳過ぎまでやっていました。大学は理系ですけど、物理専攻だったので全然関係なかったですけど。徹夜で実験の仕事することもしょっちゅう。徹夜明けのまま報告書を書いて、仮眠だけで次の日の準備をすることもあって。絶対に間違いが許されない仕事ですけど、面白かったし、大好きな仕事でしたけど、身体が壊れますよね。今の年齢までやっていたら、きっと壊れてたでしょうね。

山仕事がしたかったんです。どうしても自分の手で炭を焼きたかったんです。会社員時代から師匠について修業に来ていたんですけど、やればやるほど定年後に趣味でやることではないな、と。これを生業にしたかったので、30~40代で身につけないと、50代では仕事にならないなと思って。ちょうど大きな仕事の区切りがついて、このタイミングしかないなと、42歳で会社を辞めました。

最初は岐阜の方の窯に行きました。炭を焼くには木を切らなくてはいけないので、間伐の手伝いをしながら炭を焼いていました。間伐で切った木をどう使うか、とか。いろんなことをやらないと食っていけないので、山仕事の手伝いに行ったり。そのうち、山の管理で、製材の仕事がきて、昔ながらの製材機がきて面白そうだなと思って。きちんと師匠に教わりました。木を知れば知るほど面白くなって。

 

1本の木を無駄なく使ってほしい

木にどうやって刃を入れるかってものすごく大切なんです。大きな製材所は1本の木からいかに多くの製材を取るかが優先されるんですけど、私は製品のクオリティにこだわって挽いてます。木の性質を見て決めてほしいし、1本の木を無駄なく使ってほしい。実際に大工さんと一緒に山に行って、「この木!」って決めて伐ることもありますね。

伐採の時はだいたい谷側に倒すんですけど、勢いよく倒すと重力がかかって先端にはものすごい衝撃で、繊維が切れて弱くなる。大事な木は山側へ倒す。木を山に寝かせるイメージです。半年間「葉枯らし」して木を乾燥させるんですけど、木を出すときはワイヤー貼って出します。滑車や動滑車を4つ使うとか考えるのは面白いです、理系の世界ですね。炭焼きも理系なんですよ。熱化学や熱分解。理系にはたまらない世界です。

実際、製材機の刃をあつかうのは危険ですね。切れない刃を使うと割れて危ないこともあります。専門の研ぎ屋さんがいるので、お願いしています。県内にも2、3軒くらいしかないですけどね。自分で研ぐには精度が出ないので。広葉樹を伐る刃と、針葉樹を伐る刃は違うんですよ。あと、時々石を巻き込んで育っていたり、(猟銃の)鉛の球が入っていたりする木があって、当たると火花も出るし、心臓が止まるくらい驚くときがありますよ。外から見えないんですけどね。一瞬の音の違いで判断するしかないですね。

あと、4mの材木を注文されることが多いですが、木を運ぶ時、4mの木を出すのは本当に大変なんです。3mならするっと出る。3mで家造ってほしい、と設計者には言いたいですね。流通の問題かもしれませんけどね。

 

木が気がつかないうちに寝かせ、自然に乾燥させる

木は“目”ですね。年輪がすべてです。伐る時期も大切で、新月前の伐採がいいとされています。理想的なのは冬芽を作っているうちに、木が気がつかないうちに寝かせる。そして、自然に乾燥させる「葉枯らし」と「丁寧な製材」。それがそろえば、丈夫で耐久性のある木材になります。

家造りでヒノキを使うと喜ばれますが、もともと神社で神様の部屋を作る木。気分が高揚する覚醒効果で落ち着かなくなる場合もあります。その点、スギは鎮静効果があります。「檜の柱は三寸、杉は四寸」と言われますが、きちんと木を見られれば、三寸で十分です。実際住むとやさしさを感じるできることができる家ができます。スギの三寸で作ってみたい。木こりモジュールですね。

 

 

炭焼きに関しては誰にも負けない

炭焼きに関しては誰にも負けないですね。ちゃんとした窯があって、コントロールできるんですが、窯も作れる職人は私のまわりでも師匠しかいないです。木を単に焼いただけでは炭になりません。効率を求めると灰になるんです。炭は炭素の塊で、1000年2000年経っても形は変わらないですね、元素だから。地球を作っている根本が微生物で、炭のまわりに集まってきます。炭は構造的には無機物なんだけど、まわりにいい影響を与えますね。

果実だと根元に植えると、糖度を2度上げることができる。古い神社仏閣にも炭を埋めてある場所があるんですよ。アーシングになるので、電気の流れができる。住宅の床下に炭を入れるといいですよね。庭に埋めたりもお薦めです。

 

 

触れるたびに木が育った山の風景が浮かぶ

家具を作りたいお客さんに森に来てもらって「選木」してもらうんです。選んだ木を伐採して、乾燥させた半年後にまた来てください、と。伐り出して製材をして家具を作る過程を実際に見てもらっています。既製品より割高にはなりますけど、自分で選んだ木ですから、「一生ものです」と、お客さんは大喜びされますね。山の恵みの中で育ってる木を実際に見ているので、家具に触れるたびに木が育った山の風景が浮かぶそうです。まさに、トレーサビリティ(追跡可能性)ですよ。

1本だけでもいいから、家の中に取り入れるといいですね。毎日触る柱とか、家具とか。今後はこの活動にも力を入れていきたいなと思っています。その木が育った場に行くことで、森から恵みをもらっていることを実感できるので、自然の良い循環につながっていくと思います。

北三河木こり人・北三河炭焼き人・北三木曳人 杉野賢治

参考
タチキカラ 公式ホームページ
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